#09 コンプレッション(Compression)系エフェクターを知ろう

コンプレッサー系エフェクターとは何か

コンプレッション系エフェクターとは、音のダイナミクス(音量の幅)を制御するエフェクターのことです。音が一定のレベルを超えると、その音量を抑え、逆に小さい音は持ち上げることで、全体の音量バランスを均一にします。これにより、音がよりまとまり、聞き取りやすくなります。録音やライブ演奏において重要なツールであり、ギター、ベース、ドラム、ボーカルなど様々な楽器や音源に使用されます。

主な種類と役割

  1. ダイナミックコンプレッサー
    • 音のダイナミクスを全般的に制御する標準的なコンプレッサーです。音のピークを抑え、全体のバランスを整えます。
  2. マルチバンドコンプレッサー
    • 音域を複数の帯域に分けて、それぞれに異なる圧縮をかけることができるコンプレッサーです。低音、中音、高音を別々に制御することで、より細かい音作りが可能です。
  3. リミッター
    • 特定の音量以上の音を完全にカットするコンプレッサーです。ピークを完全に抑え、クリッピングを防ぐために使用されます。
  4. サスティナー
    • 音の減衰を遅らせて、持続時間を長くするコンプレッサーです。特にギターで使用され、音を長く伸ばす効果があります。

主なパラメータ

  1. Threshold(スレッショルド)
    • 圧縮が始まる音量レベルを設定します。この値を超える音量に対してコンプレッサーが動作します。
  2. Ratio(レシオ)
    • 圧縮の比率を設定します。例えば、2:1に設定すると、スレッショルドを超えた音量が半分に圧縮されます。4:1、8:1など高い比率にすると、音量の変化がより強く制御されます。
  3. Attack(アタック)
    • コンプレッサーが動作を開始するまでの時間を設定します。アタックタイムが短いと瞬間的な音も圧縮され、長いとアタック音が残ります。
  4. Release(リリース)
    • コンプレッサーが元の音量に戻るまでの時間を設定します。リリースタイムが短いとすぐに元に戻り、長いと圧縮が長く続きます。
  5. Gain(ゲイン)またはMake-up Gain(メイクアップゲイン)
    • 圧縮後の音量を補正するためのパラメータ。圧縮によって音量が下がるため、これを元に戻すために使用します。

音作りの手順例

  1. 基準音の設定
    • コンプレッサーをオフにして、クリーンな基準音を設定します。これにより、エフェクトを加えた際の違いが明確になります。
  2. スレッショルドの設定
    • スレッショルドを設定し、圧縮を開始する音量レベルを決めます。通常は、楽曲の平均音量に合わせて設定します。
  3. レシオの設定
    • レシオを設定して、圧縮の強さを決めます。最初は2:1や4:1など中程度の比率から始め、必要に応じて調整します。
  4. アタックの設定
    • アタックタイムを設定して、どれくらいの速さでコンプレッサーが動作を開始するかを決めます。短いアタックはアグレッシブな音作りに、長いアタックは自然な音作りに適しています。
  5. リリースの設定
    • リリースタイムを設定して、コンプレッサーが元に戻る速さを決めます。短いリリースはパンチのある音に、長いリリースはスムーズな音に適しています。
  6. ゲインの設定
    • メイクアップゲインを設定して、圧縮後の音量を補正します。圧縮によって下がった音量を元に戻すことで、全体のバランスを取ります。

実際の設定例

  • 軽い圧縮
    • スレッショルド: -10dB
    • レシオ: 2:1
    • アタック: 50ms
    • リリース: 200ms
    • メイクアップゲイン: 3dB
  • 標準的な圧縮
    • スレッショルド: -15dB
    • レシオ: 4:1
    • アタック: 20ms
    • リリース: 150ms
    • メイクアップゲイン: 5dB
  • 強い圧縮
    • スレッショルド: -20dB
    • レシオ: 8:1
    • アタック: 10ms
    • リリース: 100ms
    • メイクアップゲイン: 8dB

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