名詞成分

文において話題となる個々の概念を表わす成分である名詞成分についての説明です。名詞成分は名詞・形容詞・冠詞などを含んだ人・動物・事物 を表す語の纏まりです。名詞成分は、場合によっては動詞成分も取りこみ句や節の形を取ります。名詞成分の大きな特徴は、文中の立場の違いにより格の概念を持つことです。名詞の扱いを基本として名詞成分への拡張の概念が分かると、文の基本構造をそのままに、名詞の概念をいくらでも詳細に描写できるようになります。

名詞の役割

単・複の表現

名詞はそれ自身の形を変えることで、複数であることを表現します。大多数の名詞は末尾に s または es をつける規則的な複数形を持ちます。s か es かについては、名詞の持つ語尾によって5つの規則があります。

単数形の語尾 複数形の語尾
歯の隙間から息を漏らす音 -es box – boxes / rose – roses / bush – bushes / lunch – lunches / bridge – bridges
有声音 -s bed – beds / wave – waves / chain – chains / ring – rings / star – stars / tree – trees / boy – boys
無声音 -s rope – ropes / gate – gates / stick – sticks / roof – roofs / death – deaths
子音字+y y を ie に変えて -s baby – babies / lady – ladies / fly – flies
子音字+o -es または -s hero – heroes / potato – potatoes / photo – photos / piano – pianos / mosquito – mosquito(e)s / tornado – tornado(e)s / volcano – volcano(e)s

一部の名詞は固有の複数形を持ち、変化の仕方により5つの型が存在します。

変化の仕方
語尾を無声音から有声音に変える knife – knives / leaf – leaves / wolf – wolves / mouth – mouths /path – paths / house – houses
-en を付ける ox – oxen / child – children
母音を変える man – men / goose – geese / tooth – teeth / foot – feet / mouse – mice / woman – women
同型 deer, sheep, Chinese, Japanese, Swiss
外来語の形 basis – bases / nucleus – nuclei / criterion – criteria / antenna – antennae

格の表現

格とは、文中における名詞の文法的立場を示すもので、主格所有格目的格、があります。主格は文の主題の立場、所有格は所有を表現する立場、目的格は動作の対象となる立場です。主格は日本語で「が(は)」、所有格は「の」、目的格は「に、を」の付く名詞の立場におおよそ対応します。

格の表現

主格

主格は文の主題、および be動詞 の述語の立場です(例文1、2)。人称代名詞は主格を表す独自の形を持ちます(例文1、2)。

  1. He gave his girlfriend a flower. 彼は彼のガールフレンドに1輪の花をあげました。
  2. She is a gut teacher. 彼女は良い先生です。

所有格

所有格は所有の意味を表し、日本語の「…の」に相当する働きをします。所有格は所有の対象となる名詞の直前に置かれます。人称代名詞は所有格を表す独自の形を持ちます(例文1)。一般名詞では、名詞の語尾に「 ‘s 」を付けます(例文2)。(複数形の名詞を所有格にする場合は、「 」のみを語尾に付けます。但し、mice などの不規則な複数形には単数の場合と同じく mice’s のように’s を付けます。)

  1. He gave his girlfriend a flower. 彼は彼のガールフレンドに1輪の花をあげる。
  2. I love Beethoven‘s piano sonatas. 私はベートーベンのピアノソナタが大好きです。

目的格

目的格は動詞の対象となる立場です(例文1、2)。通常は動詞の後になります。人称代名詞は目的格を表す独自の形を持ちます。

  1. He gave his girlfriend a flower. 彼は彼のガールフレンドに1輪の花をあげました。
  2. He gave his girlfriend a flower. 彼は彼のガールフレンドに1輪の花をあげました。

代名詞

人称代名詞

人称代名詞は、人称の区別を示す語です。人称代名詞は、人称・数・格(および3人称の場合は性)に応じて次の形になります(表1)。

1人称 2人称 3人称
単数 複数 単・複同型 単数 複数
主格 I we you he she it they
所有格 my our your his her its their
目的格 me us you him her it them

指示代名詞

指示代名詞は人や物を指し示したり、既出の語句や節を指し示す語です。指示代名詞には、this, these, that, those があります。

  1. That‘s what I wanted to say. それが言いたかったんだ。 (that’s = that is)

所有代名詞

所有代名詞は、「…のもの」という所有物を単独に表現する語です。所有代名詞には、mine(例文1), yours, his, hers, ours, yours, theirs があります。it に対する所有代名詞は存在しません。所有代名詞はすべて第三人称として扱います。指し示す内容により、適宜単数や複数として扱います(例文1、2)。

  1. Her computer is expensive, but his is cheap. 彼女のコンピュータは高価なものですが、彼のものは安物です。
  2. Her glasses are expensive, but his are cheap. 彼女の眼鏡は高価なものですが、彼のものは安物です。

不定代名詞

不定代名詞は、漠然と不特定の人や物を表す語です。代表的な不定代名詞に、all(例文1), another(例文2), anybody(例文3), anything(例文4), both(例文5), each other(例文6), either(例文7), everybody(例文8), everyone(例文9), everything(例文10), neither(例文11), nobody(例文12), no one(例文13), none(例文14), nothing(例文15),
one(例文16), one another(例文17), other(例文18), same(例文19), somebody(例文20), someone(例文21), something(例文22) があります。

  1. That’s all. それで全てです。
  2. Please show me another. 別のを見せてください。
  3. Anybody can do it. 誰でもそれはできる。
  4. Anything is better than nothing. どんなものでも無いよりはましだ。
  5. We love each other. 私達はお互いを愛している。
  6. I don’t want both. 両方は欲しくない。
  7. I don’t want either. どちらも欲しくない。
  8. I want neither. どちらも欲しくない。
  9. Everybody knows the fact. 誰もがその事実を知っている。
  10. Everyone knows the fact. 誰もがその事実を知っている。
  11. Everything is now ready. 全てもう用意出来ている。
  12. There was nobody in the room. 部屋には誰もいなかった。
  13. There was no one in the room. 部屋には誰もいなかった。
  14. None of them are in the room. 部屋には彼らのうち誰もいなかった。
  15. I know nothing about it. 私はそのことについて全く知らない。
  16. Which one will you take? どちらをお取りになりますか?
  17. They helped one another. 彼らは互いを助け合った。
  18. Be kind to others. 他人にやさしくなれ。
  19. I want to have the same as yours. 私もあなたと同じ物が欲しい。
  20. There is somebody at the door. 玄関に誰か来ている。
  21. There is someone at the door. 玄関に誰か来ている。
  22. I want something to drink. 何か飲み物が欲しい。

再帰代名詞

再帰代名詞は、「彼は自分を誉める」のような表現で「自分を」や「自分に」という意味を表す語です。再帰代名詞には myself, ourselves, yourself, yourselves, himself, herself, itself, themselve があります。再帰代名詞は、主語の行為が主語自身に向けられることを表す再帰表現において、「自分を」、「自分に」という意味を表すだけでだけでなく、再帰動詞と共に用いられたり、成句的表現にも多く用いられます。

疑問代名詞

疑問代名詞は名詞を問う疑問詞です。疑問代名詞には who, what があります。who は格による区別があり、は所有格 whose、目的格は whom となります。名詞を伴わずに代名詞的に用いられた疑問形容詞 which も一般に疑問代名詞と呼びます。

  1. Who is this? こちらは誰ですか?
  2. What is this? これは何ですか?
  3. Which is expencive? どちらが高価ですか?

関係代名詞

関係代名詞は、名詞に節を結び付け名詞成分を作る語です。関係代名詞には who(例文1), which(例文2), that(例文3), what(例文4) があります。このうち who だけは、主格、所有格、目的格のそれぞれで、who, whose(例文5), whom(例文6) と別の形を持ちます。(whom を who で代用することも多い。)

関係代名詞によって結び付けられる名詞を先行詞と呼びます。
who は先行詞が人のときに用いられ、which は先行詞が事物・動物の時に用います。
that は先行詞の種類によらず使うことが出来きます。
what はそれ自身に先行詞を含んだ関係代名詞です。
関係代名詞が節の中の目的語を表す場合、関係代名詞を省略することがあります(例文3)。

  1. Do you know the girl who is singing on the stage? 舞台で歌っている少女を知っていますか?
  2. The book which is on the desk is written by Stephen Hawking. 机の上にある本はスティーブン・ホーキングによって書かれました。
  3. I lost the mobile phone (that) I had bought a week before. 一週間前に買った携帯電話をなくしてしまった。
  4. That’s not what I want to say. それは私が言いたいことではありません。
  5. A child whose parents are dead is called an orphan. 両親のいない子どもは孤児と呼ばれます。
  6. Do you remember the woman whom we met the other day? 先日会った女性を覚えていますか?

先行詞と、関係代名詞節の間にカンマ「 , 」を打つことで、関係代名詞に指示代名詞的な意味を持たせることがあります。

  1. In the city I came across an old friend of mine, who treated me a good dinner. 街で私は旧友に出くわし、その旧友は豪華な食事を奢ってくれた。
  2. He said he knew the man, which was a lie. 彼はその人を知っていると言ったが、それは嘘だった。

関係代名詞節で関係代名詞に対して前置詞が用いられる場合、関係代名詞が who, which, what であれば、それを関係代名詞の直前に置くことがあります。

  1. This is the man whom I played tennis with yesterday. こちらが昨日一緒にテニスをした人です。
  2. This is the man with whom I played tennis yesterday. こちらが昨日一緒にテニスをした人です。

冠詞

冠詞は次に置く名詞の意味を限定する働きを持ちます。

定冠詞

定冠詞は話し手と聞き手が次に来る名詞の情報を既に共有していることを表す冠詞です。定冠詞には the があります(例文1)。

  1. He has a car and a motorcycle. The car is Toyota and the motorcycle is Yamaha. 彼は車とバイクを持っている。車はトヨタでバイクはヤマハだ。

不定冠詞

不定冠詞は、次に来る名詞が、話し手と聞き手が情報を共有できない不特定な一つのものであることを示す冠詞です。不定冠詞にはa があります。次に来る名詞が母音で始まる語の場合 an とします(例文1)。

  1. Do you have a pen? ペンを持っていませんか?

形容詞

付加語的用法

付加語的用法では、形容詞は名詞の前に置くことで名詞を修飾します(例文1)。特に -thing, -one, -body で終わる不定代名詞を修飾する場合は、名詞の後から修飾します(例文2)。

  1. She is a beautiful Japanese girl. 彼女は美しい日本の女のこだ。
  2. There is nothing important in this book. この本の中に重要なことはなにも無い。

叙述的用法

be動詞 の後などで、主語の属性や状態を表す(例文1、2)用法を叙述的用法と言います。

  1. I am happy. 私は幸せです。
  2. The flower smells sweet. その花はいい香りがします。

比較変化

比較変化は、程度の比較をする場合の用いられる語形です。比較変化には、より程度が大きいことを表す比較級と、程度が最も大きいことを示す最上級があります。普通、比較級は語尾を -er に(例文1)、最上級は語尾を -est としますが(例文2)が、固有の変化を持つ形容詞もあります(表1)。-ful, -less, -ous, -ing, ish, などで終わる2音節の語、3音節以上の語には、語尾を変化させずに、語の直前に more, most を付けます(例文3、4)。比較級の文では、than 以降で比較の対象を示します。

  1. London is bigger than Leeds. ロンドンはリーズより大きいです。
  2. London is the biggest in the British cities. ロンドンはイギリスの都市の中では一番大きいです。
  3. This book is more difficult than that. この本はあの本よりもっと難しいです。
  4. This book is the most difficult of all. この本は全ての本の中で一番難しいです。
規則的な比較変化 不規則な比較変化
原級 比較級 最上級 原級 比較級 最上級
big bigger biggest good better best
young younger youngest bad worse worst
early earlier earliest much/many more most

程度が劣っていることを表す比較級では、すべて比較級では less、最上級では least を用います。

  1. The politician is less wise than his brother. その政治家は彼の兄ほど賢くありません。
  2. The politician is the least wise of all the politicians. その政治家はすべての政治家の中で最も愚かです。

疑問形容詞

疑問代名詞を名詞の前に置くことで、形容詞的な働きをさせることが出来ます。

  1. What time is it now? 今何時ですか?
  2. Which car is yours? どちらの車があなたのですか?

関係形容詞

名詞に節を結び付け名詞成分を構成するに当たり、節内の名詞を直接形容する使い方をする関係詞です。

  1. Lend me what money you can. 貸せるだけの金を貸してくれ。
  2. The nation might have atomic weapons, in which case we may rush into war. その国は核兵器を持っているかも知れず、その場合我々は戦争に突入する。
  3. You may read whichever book you like. どちらでもあなたの好きな本を読んで構いません。
  4. You may read whatever book you like. どんな本でもあなたの好きな本を読んで構いません。

名詞化

to不定詞

to不定詞は、動詞の原形の前にtoを付けたものです。to不定詞は、動詞を名詞化する場合に用いることが出来ます(例文1)。to不定詞は目的語を持つことが出来、その場合to不定詞の後に目的語を置きます(例文2)。完了形、進行形、受動態をto不定詞とすることも出来ます(例文3)。

  1. To live is to die. 生きることは死ぬこと。
  2. It is not so easy to study Physics. 物理学の勉強は簡単ではありません。
  3. I didn’t expected to be invited. 招待されるとは思っていませんでした。

動名詞

動名詞は、原形の語尾に -ing を付けたものです。
動名詞は動詞を名詞化する場合に用います(例文1)。
動名詞は後に目的語を取る事が出来、その場合to不定詞の後に目的語を置きます(例文2)。
完了形、進行形、受動態を動名詞とすることも出来ます(例文3)。

  1. Seeing is believing. 見ることは信じること。
  2. Getting a job in Tokyo is very difficult. 東京で仕事を見つけることは大変難しい。
  3. He admitted having done it. 彼はそれをしたことを認めた。

形容詞化

現在分詞

現在分詞とは、原形の語幹に -ing をつけたものです(表1)。現在分詞は「…している」「…しつつある」という意味を表す形容詞のように用いられます(例文1~3)。現在分詞の後に現在分詞の目的語に当たる語を用いることが出来ます(例文1)。時制の進行形は、時制としてではなく現在分詞としてとらえることも出来ます(例文2)。

  1. The girl singing a song on the stage is my daughter. 舞台の上で歌を歌っている少女は私の娘です。
  2. He is playing the TV game now. 彼はいまテレビゲームをしています。
  3. The baby kept crying. その赤ん坊は泣き続けました。
原形 go come die run
現在分詞 going coming dying running

過去分詞

過去分詞とは、原則として原形の語尾に -ed を付けたものです。規則動詞の場合、過去形と過去分詞形は同形です。過去分詞は完了形や受動文に用いられる他に、「…される」、「…された」という受動的な意味(他動詞の場合)や、「…した」という完了の意味(自動詞の場合)を表す形容詞のように用いられます。不規則変化動詞の過去分詞は独自の形を持ちます。

  1. A Burned child dreads the fire. 火傷した子どもは火を恐れる。
  2. This is a picture painted by Dali. これはダリによって描かれた絵です。

to不定詞

to不定詞は、動詞の原形の前にtoを付けたものです。to不定詞は、動詞を用いて名詞を形容する場合に用いることが出来ます(例文1、2)。to不定詞の目的語をto不定詞の後に置くことが出来ます。完了形、進行形、受動態をto不定詞とすることが出来ます。

  1. I want something to drink. 何か飲み物が欲しい。
  2. I have a lot to do. 私はやるべきことがたくさんある。

名詞 + -ly

名詞の語尾に -ly を付けることで、fatherly, weekly, daily, hourly 等のように、形容詞を作る場合があります。

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