#04 モジュレーション(Modulation)系エフェクターを知ろう

モジュレーション系エフェクターとは?

モジュレーション(Modulation)とは技術的に「周波数、振幅、位相、または他の特性を変えること」を意味します。つまり、モジュレーション系エフェクターは、音のピッチ、位相、タイミング、または振幅を周期的に変化させることで音色に動きを与えるエフェクターの総称です。

モジュレーション系エフェクターには、主に以下のような種類があります。

  1. コーラス(Chorus)
    • 音を少しだけ遅らせた複製音を追加し、オリジナルの音と混ぜ合わせることで、厚みや広がりを与えます。複数の音が同時に鳴っているような効果が得られます。
  2. フランジャー(Flanger)
    • 似たような原理で動作しますが、音を周期的にフィードバックさせ、よりメタリックで「ジェット機の飛行音」に似た効果を生み出します。
  3. フェイザー(Phaser)
    • フェーズシフト(位相変調)を用いて音に特徴的なスウィープ効果を与えます。フィルタリング効果により、音が周期的に「うねる」ように聞こえます。
  4. ビブラート(Vibrato)
    • 音のピッチを周期的に変化させ、音に揺れや動きを与えます。特にギターやシンセサイザーで使われることが多いです。
  5. トレモロ(Tremolo)
    • 音量を周期的に変化させることで、音の強弱にリズム感や動きを加えます。

コーラス(Chorus)

コーラスとは

コーラスは、音に厚みと広がりを与えるエフェクターです。音に微妙に異なるタイミングとピッチの複製を追加することで、まるで複数の楽器が同時に演奏されているかのような効果を生み出します。この効果により、サウンドが豊かになり、音の深みが増します。

主なパラメータ

  • Rate(レート)
    • 変調の速度を決めるパラメータ。数値を上げると、コーラス効果の変化が速くなり、音の揺れが速くなります。
  • Depth(デプス)
    • 変調の深さを決めるパラメータ。数値を上げると、ピッチやタイミングの変化が大きくなり、音の揺れが強くなります。
  • Mix(ミックス)
    • エフェクト音とオリジナル音のバランスを調整するパラメータ。数値を上げると、エフェクト音が強調され、数値を下げるとオリジナル音が強調されます。
  • Delay Time(ディレイタイム)
    • 複製された音がどれくらい遅れて聞こえるかを決めるパラメータ。数値を調整することで、音の広がり具合が変わります。

音作りの手順例

  1. 基準音の設定
    • まず、コーラスエフェクターをオフにして、クリーンな基準音を設定します。これにより、エフェクトを加えた際の違いがはっきりと分かります。
  2. レートの設定
    • レートを低めに設定し、ゆっくりとした揺れを作ります。通常、1〜2Hz程度が自然な揺れを感じさせます。
  3. デプスの設定
    • デプスを調整して、揺れの深さを設定します。最初は中程度に設定し、音の厚みを確認しながら調整します。
  4. ミックスの調整
    • オリジナル音とエフェクト音のバランスを調整します。エフェクトが強すぎると音が不自然になるため、適度なバランスを見つけます。
  5. ディレイタイムの設定
    • ディレイタイムを調整して、音の広がりを微調整します。短いディレイタイムはタイトなサウンドを、長いディレイタイムは広がりのあるサウンドを作ります。

実際の設定例

  • 軽いコーラス効果
    • レート: 1.0Hz
    • デプス: 30%
    • ミックス: 40%
    • ディレイタイム: 10ms
  • 豊かなコーラス効果
    • レート: 0.5Hz
    • デプス: 70%
    • ミックス: 60%
    • ディレイタイム: 20ms
  • 強いコーラス効果
    • レート: 1.5Hz
    • デプス: 100%
    • ミックス: 80%
    • ディレイタイム: 15ms

フランジャー(Flanger)

フランジャーとは

フランジャーは、音に独特の波打つようなメタリックな効果を与えるエフェクターです。これは、オリジナルの音に微妙に遅延させた複製音を加え、その遅延時間を周期的に変化させることで生じます。フランジャーは、ギター、シンセサイザー、ドラムなどの楽器に使用され、音に動きと空間的な深みを加えます。

主なパラメータ

  1. Rate(レート)
    • フランジング効果の速度を決めるパラメータ。数値を上げると、エフェクトの変化が速くなります。
  2. Depth(デプス)
    • フランジング効果の深さを決めるパラメータ。数値を上げると、音の揺れが強くなります。
  3. Feedback(フィードバック)
    • フランジング効果の強さを決めるパラメータ。エフェクト音を再び入力に戻すことで、効果が強調されます。数値を上げると、音がよりメタリックになり、エコーのような響きが強くなります。
  4. Manual(マニュアル)
    • フランジング効果の基準となる遅延時間を手動で設定するパラメータ。これにより、エフェクトの基本的な音色を調整できます。
  5. Mix(ミックス)
    • エフェクト音とオリジナル音のバランスを調整するパラメータ。数値を上げると、エフェクト音が強調されます。

 音作りの手順例

  1. 基準音の設定
    • フランジャーをオフにして、クリーンな基準音を設定します。これにより、エフェクトを加えた際の違いが明確になります。
  2. レートの設定
    • レートを中程度に設定し、フランジング効果の速度を調整します。最初は0.5〜1Hz程度から始めると良いでしょう。
  3. デプスの設定
    • デプスを調整して、揺れの深さを設定します。最初は中程度に設定し、音の揺れを確認しながら調整します。
  4. フィードバックの設定
    • フィードバックを調整して、効果の強さを設定します。少量から始めて、音のメタリック感が強まりすぎないように注意します。
  5. マニュアルの設定
    • マニュアルを調整して、フランジング効果の基本的な音色を設定します。遅延時間が短いほど、効果が鋭くなります。
  6. ミックスの調整
    • オリジナル音とエフェクト音のバランスを調整します。エフェクトが強すぎると音が不自然になるため、適度なバランスを見つけます。

実際の設定例

  • 軽いフランジャー効果
    • レート: 0.5Hz
    • デプス: 25%
    • フィードバック: 15%
    • マニュアル: 50%
    • ミックス: 30%
  • 標準的なフランジャー効果
    • レート: 0.8Hz
    • デプス: 50%
    • フィードバック: 40%
    • マニュアル: 60%
    • ミックス: 50%
  • 強いフランジャー効果
    • レート: 1.2Hz
    • デプス: 75%
    • フィードバック: 70%
    • マニュアル: 70%
    • ミックス: 70%

フェイザー(Phaser)

フェイザーとは

フェイザーは、音に周期的なうねりを与えるエフェクターです。音の位相(フェーズ)を変調することで、特定の周波数帯域が強調されたり弱められたりする効果を生み出します。これにより、音に特有の揺れや動きを加え、空間的な広がりや深みを与えます。フェイザーは、ギター、シンセサイザー、キーボードなどの楽器によく使用されます。

主なパラメータ

  1. Rate(レート)
    • 位相変調の速度を決めるパラメータ。数値を上げると、エフェクトの変化が速くなります。
  2. Depth(デプス)
    • 変調の深さを決めるパラメータ。数値を上げると、位相変調の範囲が広がり、音の揺れが強くなります。
  3. Feedback(フィードバック)
    • エフェクト音を再び入力に戻すことで、効果を強調するパラメータ。数値を上げると、エフェクトがより顕著になり、音に複雑な響きが加わります。
  4. Stage(ステージ)
    • 位相シフターの数を決めるパラメータ。ステージ数が多いほど、エフェクトが複雑になります(通常、2、4、6、8ステージなどが選べます)。
  5. Mix(ミックス)
    • エフェクト音とオリジナル音のバランスを調整するパラメータ。数値を上げると、エフェクト音が強調されます。

音作りの手順例

  1. 基準音の設定
    • フェイザーをオフにして、クリーンな基準音を設定します。これにより、エフェクトを加えた際の違いが明確になります。
  2. レートの設定
    • レートを低めに設定し、ゆっくりとした揺れを作ります。通常、0.1〜2Hz程度が自然な揺れを感じさせます。
  3. デプスの設定
    • デプスを調整して、揺れの深さを設定します。最初は中程度に設定し、音の揺れを確認しながら調整します。
  4. フィードバックの設定
    • フィードバックを調整して、エフェクトの強さを設定します。少量から始めて、音が過剰に複雑にならないように注意します。
  5. ステージの設定
    • ステージ数を調整して、エフェクトの複雑さを設定します。2〜4ステージが一般的で、ステージ数を増やすと効果がより顕著になります。
  6. ミックスの調整
    • オリジナル音とエフェクト音のバランスを調整します。エフェクトが強すぎると音が不自然になるため、適度なバランスを見つけます。

実際の設定例

  • 軽いフェイザー効果
    • レート: 0.5Hz
    • デプス: 30%
    • フィードバック: 10%
    • ステージ: 2
    • ミックス: 30%
  • 標準的なフェイザー効果
    • レート: 0.8Hz
    • デプス: 50%
    • フィードバック: 30%
    • ステージ: 4
    • ミックス: 50%
  • 強いフェイザー効果
    • レート: 1.2Hz
    • デプス: 70%
    • フィードバック: 60%
    • ステージ: 6
    • ミックス: 70%

ビブラート(Vibrato)

ビブラートとは

ビブラートは、音のピッチ(音高)を周期的に揺らすことで、音に豊かさと表現力を加えるエフェクターです。自然なビブラートは、歌手やバイオリニストなどの演奏者が技術的に音を揺らすことで得られますが、エフェクターを使用することで楽器やボーカルにビブラート効果を追加できます。ビブラートは、特に持続音や長い音符に使用され、音に生命感や感情を加える役割を果たします。

主なパラメータ

  1. Rate(レート)
    • ピッチの揺れの速度を決めるパラメータ。数値を上げると、ピッチの変動が速くなります。
  2. Depth(デプス)
    • ピッチの変動幅を決めるパラメータ。数値を上げると、ピッチの揺れが大きくなります。
  3. Waveform(ウェーブフォーム)
    • ピッチ変動の波形を決めるパラメータ。サイン波、三角波、矩形波などがあり、波形によってビブラートのキャラクターが変わります。
  4. Delay Time(ディレイタイム)
    • エフェクトがかかり始めるまでの時間を設定するパラメータ。数値を上げると、音が発生してからビブラートが始まるまでの時間が長くなります。

音作りの手順例

  1. 基準音の設定
    • ビブラートをオフにして、クリーンな基準音を設定します。これにより、エフェクトを加えた際の違いが明確になります。
  2. レートの設定
    • レートを中程度に設定し、ピッチ変動の速度を調整します。最初は2〜5Hz程度から始めると良いでしょう。
  3. デプスの設定
    • デプスを調整して、ピッチ変動の幅を設定します。最初は中程度に設定し、音の揺れを確認しながら調整します。
  4. ウェーブフォームの設定
    • ウェーブフォームを選択して、ビブラートのキャラクターを決めます。サイン波は滑らかで自然なビブラートを、矩形波は機械的なビブラートを作り出します。
  5. ディレイタイムの設定
    • ディレイタイムを調整して、エフェクトがかかり始めるタイミングを設定します。ディレイタイムを短くすると、音がすぐにビブラートします。

実際の設定例

  • 軽いビブラート効果
    • レート: 3Hz
    • デプス: 20%
    • ウェーブフォーム: サイン波
    • ディレイタイム: 0ms
  • 標準的なビブラート効果
    • レート: 4Hz
    • デプス: 40%
    • ウェーブフォーム: 三角波
    • ディレイタイム: 50ms
  • 強いビブラート効果
    • レート: 5Hz
    • デプス: 60%
    • ウェーブフォーム: 矩形波
    • ディレイタイム: 100ms

トレモロ(Tremolo)

トレモロとは

トレモロは、音量を周期的に変化させるエフェクターです。ピッチ(音高)ではなく、音の大きさを揺らすことで、音にリズム感や動きを加える役割を果たします。トレモロは、ギターやキーボードなど様々な楽器に使用され、楽曲に独特の雰囲気やパルス感を与えます。

主なパラメータ

  1. Rate(レート)
    • 音量変化の速度を決めるパラメータ。数値を上げると、音量の変化が速くなります。
  2. Depth(デプス)
    • 音量変化の深さを決めるパラメータ。数値を上げると、音の大きさの変化が大きくなります。
  3. Waveform(ウェーブフォーム)
    • 音量変化の波形を決めるパラメータ。サイン波、三角波、矩形波などがあり、波形によってトレモロのキャラクターが変わります。
  4. Symmetry(シンメトリー)
    • 波形の対称性を調整するパラメータ。対称性を変えることで、音量変化のリズムが変わります。

音作りの手順例

  1. 基準音の設定
    • トレモロをオフにして、クリーンな基準音を設定します。これにより、エフェクトを加えた際の違いが明確になります。
  2. レートの設定
    • レートを中程度に設定し、音量変化の速度を調整します。最初は3〜5Hz程度から始めると良いでしょう。
  3. デプスの設定
    • デプスを調整して、音量変化の深さを設定します。最初は中程度に設定し、音の揺れを確認しながら調整します。
  4. ウェーブフォームの設定
    • ウェーブフォームを選択して、トレモロのキャラクターを決めます。サイン波は滑らかで自然なトレモロを、矩形波はオンオフのような急激なトレモロを作り出します。
  5. シンメトリーの設定
    • シンメトリーを調整して、音量変化のリズムを設定します。これにより、音の揺れ方が変わります。

実際の設定例

  • 軽いトレモロ効果
    • レート: 3Hz
    • デプス: 20%
    • ウェーブフォーム: サイン波
    • シンメトリー: 50%
  • 標準的なトレモロ効果
    • レート: 5Hz
    • デプス: 50%
    • ウェーブフォーム: 三角波
    • シンメトリー: 50%
  • 強いトレモロ効果
    • レート: 7Hz
    • デプス: 80%
    • ウェーブフォーム: 矩形波
    • シンメトリー: 50%

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